【読書記録】薄情(絲山秋子)
- 作者: 絲山秋子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/12/18
- メディア: 単行本
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絲山秋子の新作。
前作の「離陸」はエンタテイメントに寄った氏の新境地を拓く意欲作だったが、本作は絲山ワールドど真ん中の作風。
舞台は、氏が居を構え、また氏の傑作(だと勝手に思っている)「ばかもの」と同じ群馬県高崎市。
この東京から近い地方都市に「帰ってきたもの」「住み続けているもの」そして「東京からやって来たもの」の、それぞれ織りなすドラマが淡々と綴られる。
途中、主人公の身も蓋もない失恋が描かれるところが「ばかもの」と似ていて興味深かったが、かの作が終盤に向け感動的なフィナーレを迎えるのに比べ、本作ではさらに後味の悪い事件が起こる。
その事件が「住み続けるもの」と「余所者」の違いを浮き彫りにして、比較的静かに物語は終わる。
地味な作品だが、絲山秋子らしい良い小説だと思う。
それはそうと、この本の題名、何が「薄情」なのだろう?
特定の登場人物なのか、はたまた別の何かが薄情なのか......いろいろ考えたけど、良くわからない。
きっと作者なりの意図はあるのだろうが(当たり前だw)、私の読解力ではそれを汲み取ったり想像を巡らす事ができず、少々悔しい思いをした。
【読書記録】みんな彗星をみていた(星野博美)
- 作者: 星野博美
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/10/06
- メディア: 単行本
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私の読書は、基本的には小説に限定される。
今起こっている世の中の大抵のことは、新聞読んでいればある程度の解説付きで読むことができるし、各紙毎の偏りはブログなどの情報で十分に補正できる。
ビジネス書も、若い頃に読んだD・カーネギーやスティーブン・R・コヴィーの焼き直しばかりだし、50も半ばになり先の見えた中年リーマンが読むほど価値のあるものとは思えない。
もちろん、仕事上必要な専門知識は、その都度専門書等に求めたりもするが、それは私の中では「読書」ではない。
そういう訳で、私が小説以外の本を読むのは、その時に本当に興味をもった(または気の向いた)ものだけに限定されるのだが、例外的に無条件に手を出すのが星野博美の書くノンフィクションだ。
その著作の全てを読んだわけではないが、「コンニャク屋漂流記」、「転がる香港に苔は生えない」、「島へ免許を取りに行く」など、いずれも荒削りながら骨太の素敵な作品だ。
そんな彼女が今回取り組んだのは、400年以上前の日本、主にスペインから来た宣教師と日本人切支丹たちの物語、テーマはズバリ「殉教」だ。
氏にしては珍しいこの「殉教」というネガティブなテーマを、どのように料理していくのか、興味をもって読み進めた。
序盤はリュート(主に中世からバロック期にかけてヨーロッパで用いられた古楽器群の総称。 因みに表紙の女性が弾いているのはリュートではなくビウエラ。)を巡るあれやこれやで、ソフトな導入となるが、如何せんあの時代の切支丹たちを書くにということは、必然的に陰湿なものとならざるをえず、コレジャナイ感はすごい。
しかしながら、終盤スペインに出張るあたりからは、いつものズシズシと逞しく前に進む星野ワールドが展開されるので、そこは安心してほしい。
ただ読後、どうしてもこの作品を手放しに支持できない違和感がどうしても残った。
それが何なのか2日ほど考えたのだが、恐らくそれは作者がある程度切支丹サイドに軸足を置いたため、少なからず「殉教」を美化してる点にあるのではないか.....と思うに至った。
その時の為政者や宗教の指導的立場の人間が、組織の都合とかで末端や中間層に対して、死を正当化したり美化する行為は、現代社会において決して認めてはならない行為だと思っている。
私の中では、キリスト教であれ、仏教であれ、神道であれ、宗教に殉じる死を美化した時点で、すべてそれは「カルト」である。
作者はそんなつもりはないのかもしれないが、ちょっと「殉教」をロマンチックに捉えすぎた嫌いがあるのはやや残念だ。
ただ、私にとってあまり馴染みのなかったこの切支丹の時代が、世界史の動きと連動してとても興味深い時代であることに気づかせてくれた本であり、結論から言ってやはり星野博美は面白い。
自宅のPC環境アップグレード(買い替え....というより買い増し)
きっかけ
Google Chromeが、平成28年3月末日を以て Windows Vista のサポートを終了した。
Web環境のセキュリティがかなり不安になるので、これを機に自宅のPC環境の変更を検討することにした。
現在の環境および用途
現在の自宅のPCは、既に丸7年使っている DELL のミニタワーマシン。
主なスペックは以下のとおり。
- プロセッサ Intel® Core™2 Duo CPU E7400 @ 2.80GHz × 2
- グラフィック Gallium 0.4 on AMD RV620 (DRM 2.43.0, LLVM 3.6.2)
- メモリ 4GB
- OS Windows Vista
完全にふた昔前のマシンである。
そして主な用途は以下のとおり。
- Web閲覧(SNS、はてブ、ニュースサイト他)
- ブログ執筆
- 音楽視聴(Google Play Music、Radiko他)
- 年1回の年賀状印刷(表裏)と履歴管理
- ランニングデータ及び体重・体脂肪の管理
PCでゲームをする趣味は全くないので、7年オチの中古マシンでも処理能力的には全く不満なし。
要はセキュリティの問題だけなので、いかに安価に済ませるか.....というのが最大の命題となった。
検討
まず、最もコストのかからない方法として、現行マシンのまま Windows から 、フリーかつオープンソースな OS である Linux ディストリビューションの中で、もっともメジャーな Ubuntu に乗り換えるという方法を検討。
⇒ Ubuntuとは | Ubuntu Japanese Team
これなら基本コストゼロで最新の OS 環境が手に入る。
素人の割には UNIX 系 OS との付き合いは長く、20年以上前に DOSモバに Pocket BSD 入れてMule使い倒したりしていた。(これ語るとキリがないのでサラッと流すw)
また現行マシンに買い替える前にも、寿命間近のWindowsマシンを ubuntu に入れ替えて、それなりに快適に1年くらい使っていた。
しかしその時は、ubuntu では年賀状の宛名印刷に全く対応できないことが判明したため、結局その時もWindowsマシンに新たに買い換えた経緯がある。(当時は年賀状200枚以上書いていたので、それなりには切実な問題であった)
今般検討にあたり、あれから7年以上経っているので、少しは状況が変わっていればと思い、色々と調べてみるが、結局は当時と状況は殆ど変らず、Windows並に手軽に毛筆体で宛名印刷することは、Linuxでは全く望めないことが判明。
加えて、いま使っているランニングウォッチ(ガーミンFA220)で、Linuxではウォッチ側のソフトウェアのアップデートが出来なことが判明。(ランニングデータの連携はスマホアプリのBluetooth接続で可能)
という訳で、やはり Windows 環境を完全に捨てることは難しいという結論になった。
だがしかし、デスクトップのメイン機を Window マシンで買い換えるとなるとかなりの出費になってしまい、これでは我が家の大蔵大臣(死語)に、具申すらし辛い。
そこで色々と考え取捨選択の結果、メイン機は現行マシンに ubuntu をインストールして継続使用、サブマシンとして Windows ミニノートを購入し、トータルコストを抑えつつ、加えてモバイル環境の向上を図ることとした。
機種選定
安さだけで言えば、ASUSあたりでWindows10 の11インチが3万円切るところから購入できるが、準メイン機種として使うにはCPU、メモリ、ストレージ容量ともにやや不安が残る。
そこで色々と調べた結果、税込みで5万円を僅かに超えることとなったが、スペック的にやや余裕のある以下の機種にした。
実は本機種、「エントリー」モデル(3万4980円/税別)と、「エントリー・プラス(128GB SSD 搭載)モデル」(4万9980円/税別)の、2つのラインアップを展開している。
「エントリー」モデルは、Celeron N3050(1.6GHz/最大2.16GHz、2コア/2スレッド、2次キャッシュ2MB)/メモリ2GB/32GB eMMC搭載。
「エントリー・プラス(128GB SSD 搭載)」モデルは、Pentium N3700(1.6GHz/最大2.4GHz、4コア/4スレッド、2次キャッシュ2MB)/メモリ4GB/128GB SSD搭載。
前者の「エントリー」モデルはCPU、メモリ、ストレージともに、準メインマシンとして使うには明らかに実力不足。
ここは15千円の差なので迷わず「エントリー・プラス」モデルを選択することとした。
詳細は以下の記事に詳しい。
運用等
右がubuntu に入れ替え継続使用のデスクトップと、左が新規購入のWin10サブノート......ま、見ればわかる。
我が家の2階に2畳ほど書斎コーナーがあり、デスクトップ機はそこに鎮座している。
1階のリビングは、嫁がほぼいつもTVを見ているので、私はここに篭ってこれで音楽聴きながら Web巡回したり、ブログ書いたりしている。(私は朝の30分以外めったにテレビは観ない)
ただこの書斎コーナーは寝室の1コーナーなので、嫁が寝た後とか、嫁が起きる前の早朝(年寄りは朝が早い)は、嫁の安眠を妨げるので、今まではPCを使うことが出来なかった。
今般サブノートを手に入れたので、そのような際には1階ののリビングでサブノートを使うことが出来るようになった。
あと、スタバで意識高い系() のフリを、してみたりも出来るようにもなったw
運用のキモは以下の2点。
- Google Chrome ブラウザによる、デスクトップ、サブノート、スマホ、3端末共通のWeb環境(設定、ブックマーク、履歴、拡張機能 etc.)
- Google ドライブ を使用した、同じくデスクトップ、サブノート、スマホ、3端末共通のクラウド環境
サブノートは Win10 マシンなので、問題なくスマホと連携した上記環境を構築できた。(それにしても Win10 のスタートメニューは使い辛い)
ただ、ubuntu 環境での上記を構築するには、直接的にも間接的にも様々な苦労.....という程ではないにせよ、色々と手間暇がかかったので、それについては稿を改めたいと思う。
まとめとしては、5万円少々のコストで最新のOS環境と、そこそこのモバイル環境を、それぞれ連携の取れた環境で構築するることができたので、それなりに満足感の高い選択が出来たのではないかと思う。
【読書記録】虚人の星(島田雅彦)
細々とではあるがこのブログも始めて10年が経ち、かれこれ2000以上の記事を書いてきた。
その2000以上の記事のなかで、政治関連の話題に触れたものはひとつもない。
このブログを始めるもっと前に、地域コミュニティーのメーリングリストを主催していたことがある(たぶん5年以上は続いた)のだが、その際も「政治と宗教」の話題は厳禁というルールを、頑なに守り続けた。
この手の話題は落としどころがないので、フレーミング(今風に言うと炎上?)が起こると、収拾がつかなくなるので面倒臭い......というのが、唯一の理由である。
だが今回ついに、内容を事前に確認せずにこの小説を手に取ってしまったがために、前例を違えざるを得なくなってしまった。
- 作者: 島田雅彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2015/09/25
- メディア: 単行本
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軽い話を小難しく書くのが彼の作風だが、本作も中国の脅威、米国の立ち位置などリアリティ溢れる設定をベースとしつつも、小説的面白さに富んだ作品となっている。
結局、主人公は日本国を裏切るのか、はたまた国を救うのかがこの作品の読みどころになるのだが、ラストで一気に本作の政治的主張が展開されることになる。
(ここからややネタバレあり)
本作の主張は、「右」とか「左」といった政治的イデオロギーに主眼は置かれず、あくまで「護憲」「不戦」「平和」にある。
昨今「護憲」を論じるとサヨク呼ばわりされる風潮があるが、全くをもってナンセンスである。
本作中でも触れているが、天皇陛下も、そのお言葉の中で「護憲」「平和」に言及されることが多い。
あまり多くを語ることは避けるが、私も憲法改正は当面不要であると考えるし、戦争は絶対的に避けなければならないと考えている。
憲法前文は実に美しい名文であり、力強く「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」を謳いあげている。
もちろんそれは理想論なのかもしれないが、それを目指すことは絶対的に止めてはいけないと思う。
あと、少なくとも小説家やミュージシャンは、いつでも理想を掲げ主張し続けてていて欲しいと思う。
体制に迎合する言論人やアーチストなんて糞食らえだ!
そんな主張を含んだ作品ではあるが、小説として面白いのは間違いないし、エピローグもなかなか洒落ていて好きだ。
島田雅彦、渾身の一作だと思う。
第1三半期の振り返り(PDCA.....ってかw)
今日から5月で、早くも2016年も三分の1が終わった。
ちょうど区切りなので、今年の目標の進捗を確認するとともに、着実に目標を達成するため、必要があれば達成に向けた計画の修正を検討したいと思う。
年頭ではないのだが、今年立てた(仕事以外の)目標は2つ。
その一つが「年間100冊の本を読んで、その読書記録をブログにアップする」というものだ。
4月までの4ヶ月で読んだ本は28冊........年間100冊読むには、単純割りでこの時点で33.3冊必要。 前年は同時期で29冊、年間で92冊だったことを考えると、明らかに目標未達ペースだ。
特に4月になって月間5冊と、極端にペースが落ちているのが進捗未達の主な原因だが、これはプロ野球が開幕したせい。
メインの読書タイムである帰りの通勤時間帯が、ラジオでの野球観戦時間とダブるのだ。
これは「仕事と私、どっちが大事なの?」的なある意味仕方のない(?)ことなので、朝の通勤タイム(主にネット巡回の時間)を読書に回すなどの工夫が必要だろう。
このブログへの読書記録のアップは一応出キチンと来ているので、あとは読むのみだ。
好きなことに割く時間を増やそう.....という話なので、前向きに取り組んでいきたいと思う。
もうひとつの目標はダイエット..... 「体脂肪を年末までにグロス9キロにする」だ。
4月を終えた実績は以下の通り。
相変わらずブレが激しいので、前回同様に月ごとの平均値にする。
こちらはなかなか順調である(笑)
因みに、目標とは直接は関係ないものの、ダイエットと補完関係にあるランの方は以下のとおり。
今年に入ってからはコンスタントに月150キロペース......全盛期の半分で完全に「なんちゃってランナー」に成り下がっているが、通勤時間が長い上に休みも不規則でなかなか思うように距離が伸ばせない。
夏に向けてもう少し伸ばすにしても年間で2000キロが関の山......歳も歳だし、これくらいのほうが却って健康的なのかも(笑)
8年ぶりにジーンズ新調♪
久しぶりにジーンズを新調した。
実は30代半ば迄はトラッド一辺倒だったので、それまでジーンズ持ってなかった。
40歳近くなってやっとジーンズ穿くようになって以来、かれこれ20年近く Levi's 501 一筋。
ただ週末にしか穿かないので結構長持ちする。
前に買った時の記事はこれなので、約8年ぶりの新調。
で、現状はこんな感じ。
いい味出ているのだが、流石に太腿のあたりは穴が開いたり擦り切れたりしている。
今回はこちらで購入。
⇒ Levi's® Outlet | 三井アウトレットパーク 幕張
(そういえば前回購入したのも、佐賀単身赴任時代、鳥栖のアウトレットだった。)
アウトレット価格の 8,500円で購入したのがこちら。
501 は 2013年にモデルチェンジして、シルエットがスリムかつシャープになったらしい。
実際穿いてみても(ダイエットが成功して、30インチから29インチにサイズダウンしたせいもあるのだろうが)だいぶ細身になった感じだ。
だがしかし、メイドイン・ハイチの安物 501 とは言え、やはり 501 は穿いてて安心感がある上に、なんとも言えない風格がある。
やっぱ一生 501 だな!!
(追記)2016-04-26 23:28
生きてる間に、あと何本ジーンズ穿き潰せるのだろうか.....などと思ってみたり (´・ω・`)
【読書記録】曽呂利!秀吉を手玉に取った男(谷津矢車)
- 作者: 谷津矢車
- 出版社/メーカー: 実業之日本社
- 発売日: 2015/07/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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豊臣秀吉のお伽衆にして、多くの有名な頓知話を残した曽呂利新左衛門を中心とした、秀吉をめぐる「獅子身中の虫」達の奇想天外な歴史小説。
設定は奇想天外だが、様々なな史実をつなぎ合わせながら展開するので、ストーリーとしての破綻はない。
そして、そのアイディアは秀逸であり、またそれぞれの人物造形も優れているため、とても面白く読み進めることができる。
唯一惜しむらくは、終盤のタネ明かしである「何故?」の部分の設定が甘く、結果として曽呂利の人物像が、最後の最後でボヤけてしまうところか。
作者の谷津矢車は、歴史小説分野での若手として、秀でたストーリーテラーであることは事実だろう。(1986年生れ)
今後も注目していきたい作家の一人である。