【読書記録】ナイルパーチの女子会(柚木麻子)

ナイルパーチの女子会

ナイルパーチの女子会

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ブログがきっかけで偶然出会った大手商社につとめる栄利子と専業主婦の翔子。互いによい友達になれそうと思ったふたりだったが、あることが原因でその関係は思いもよらぬ方向に―。女同士の関係の極北を描く、傑作長編小説。

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第28回山本周五郎賞受賞作であり、直木賞候補にもなった作品。

柚木麻子の作品は初めてだが、話題となっただけありなかなか読み応えのある小説となっている。

因みにナイルパーチとはスズキ目アカメ科に属する大型の淡水魚であり、商業上重要な食用魚。生態系への影響は大きいと言われ国際自然保護連合(IUCN)の「世界の侵略的外来種ワースト100」に指定されている。(ナイルパーチ - Wikipedia

かなりカワイイ系の表紙イラストの上部に、薄っすらと描かれているのがナイルパーチであり、主人公のひとり、栄利子のメタファーとして描かれている。

栄利子について、読後頭に浮かんだキーワードが「パートナーのいない共依存者」。

潜在的にはそれは栄利子の父親なのだろうが、自覚的にそれを否定するがゆえに歪んだ攻撃性が暴走する。

その辺りの「病み方」「狂気」はとても上手く表現されており、本作のいちばんの読みどころとなっている。

ただ、その恐怖がやや漫画チックになってしまい、いまいちリアリティが失われているところがやや残念

特に以下の3点、アラ探しのようで恐縮だが気になったので記させていただく。

  • 主人公の二人に次ぐ主要キャラである真織のキャラ付けが、あまりにも漫画的......極めつけは「芋けんぴ」w
  • 大手町の業界最王手の総合商社が舞台だが、職場のセキュリティが色々とふた昔前でありえないレベル。
  • これだけ病んだ人間が簡単に自己再生できるとは思えない。 終盤、安易に希望を語りすぎ。

ここら辺りがきちんと破綻なく描けると、漫画チックでないリアルな「狂気」とか「怖さ」が表現できるのではないだろうか。

おっさんが偉そうに書いてほんと申し訳ないのだが、期待の裏返しだと思って許して頂ければ幸いである。