最近読んだ本(「ロマンシエ」原田マハ 他)
結論から書くと、これは「楽園のカンヴァス」に並ぶ原田マハ氏の傑作だと思う。
本作は「総理の夫」や「本日は、お日柄もよく」に近いコメディータッチの作品。
ただコミカルながらも、ジェンダーや多様性に関する問題を、真正面から直球で描きつつも、同時に素敵な恋愛お仕事小説に仕上げている。
特に自分をゲイと認識する主人公(後にバイと判明するのだが)の、カミングアウトできない葛藤とその顛末は、ただただ感動的である。
ネットでは原田マハらしくない、との評判も少なからずあるようだが、その大半はLGBTに対する無理解、差別に基づくものが大半なのがとても残念である。
★★★★★
荒野氏の作品は殆ど読んだつもりでいたのだが、直木賞受賞作の本作はなぜか未読だった。
ひとことで言って「上手いなぁ」というのが率直な感想(小並感w)
淡々しつつも危うげに物語が進むが、結局はなにも起こらず、日常の連続としての新しい未来を暗示して終わる。
それにしても直截的には描かれないが、ダンナがどう感じどう受け止めていたのかを考えると切ない。
とても良い小説だった。(小並感 再びw)
★★★★☆
これ結構評判良いんだな......まぁここ最近の迷走からは、抜け出せそうな兆しは見いだせるのだけど......
多様性を肯定的に捉えて描いているつもりなのだろうが、表面を撫でているだけで登場人物たちの体温が感じられない。
言葉の綾かも知れないが、そもそもそれらを「極端なもの」として表現しているところでも、多様性に対する作者の距離感を感じざるを得ない。
彼女の代表作「人のセックスを笑うな」はもっと男と女の体温を感じる小説だったし、それ以来ずっとフォローしている作家なのだが、あれからもう10年以上の歳月が経っている。
まぁでも、最近の作風を考えれば、今回一般受けする作品が書けたのは良いことだろう。
是非もう一皮剥けて、新しい代表作と呼ばれる作品を一刻も早く世に示して欲しい。(余計なお世話w)
★★☆☆☆(期待を込めて厳し目)
西條奈加氏の小説は、市井モノを中心にファンタジーやSFなどその分野は多岐にわたるのだけど、これは氏の中では珍しい現代モノ。
とは言っても神楽坂を舞台とした市井モノに近いテイストのお話で、「無花果の実のなるころに お蔦さんの神楽坂日記」の続編。
前作は「人が死なない」軽い連作ミステリーだったけど、本作はキチンと死人の出る本格?長編ミステリー。
でもミステリーというより、やはりお蔦さんを中心とした人と人との繋がりが読みどころになってしまう.....という意味では前作の方が西條奈加らしい作品だ。
それにしても氏の作品は安心して読める......心が疲れている時に読むべきなのは、こういう小説なのだろう。
★★★☆☆