ゆっくりさよならをとなえる (新潮文庫)
- 作者: 川上弘美
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/11/28
- メディア: 文庫
- 購入: 3人 クリック: 12回
- この商品を含むブログ (141件) を見る
川上弘美って、今、マイブームです。
私が好きな女性作家*1は「川上弘美」「江國香織」「山田詠美」*2の3人なのですが、例えば、仮にサシで飲むとしたら、一番屈託無く、気軽に、そして楽しくお酒を楽しめるのは「川上弘美」なんじゃないかな....って。
でも更に、もしかしたら
そんな、背筋のシャンとした、媚びのない、でもチョットだらしない感じのする、川上弘美の「色気」が好きです。
勿論これは今日・今現在の話しで、明日は違う作家が好き!....って言っているかもしれません。 要は
なにしろ小説を書くときには、なるべく
直截 な説明とというものをしたくない。「悲しかったです」と書くかわりに、「空がとても青くて、ジェット機も飛んでいて、私はバナナパフェが食べたかった」などと書いてしまうのが、小説である(たぶん)。*4
実はこれを読んでエライ反省しました。 なにを反省したかっていうと、前回「米原万里」の「真昼の星空」を好き放題書いたことについてである。
氏の本籍は「小説家」ではなく「通訳」です。 人の話を正確かつ断定的に表現するのが、彼女の、所謂「良い仕事」なのだから、ある程度ああいう文章になってしまうのはしょうがない事なのかもしれない。*5 *6
でも「真昼の星空」、「面白くなかった」って感想は全然変わりません(笑
話は本題(「ゆっくりさよならをとなえる」について)にもどりますが、一番のオキニは「ベタベタ」なる一節。 電車内でイチャイチャするカップルの顛末なのだが、こういう「ばカップル」に対する氏の愛情と、ステレオタイプな偏見に対する痛快なエッセイになってる。 是非一読頂きたい。*7
冬の夜にすること。
ハンカチにアイロンをかける。
天津甘栗をむく。
こたつの上のみかんを眺める。
手の爪を切る。
(中略)
折り紙でいんこを折る(黄色と水色)。
昔恋人からもらった手紙(とってあるやつ)を読み返す。
カフェオレをつくる。カフェオレを飲む。
(中略)
今まででいちばんうれしかったことはなんだったかを決める(ずいぶん迷う)。
今まででいちばんかなしかったことはなんだったかを決める(すぐに決まる)。
今まで言ったさよならの中でいちばんしみじみしたさよならはどのさよならだったかを決める。(決まったら心の中でゆっくりさよならをとなえる)。
最後の一節である。
読むたびに、いつも、泣きたくなる。