【読書記録】自画像(朝比奈あすか)......ミステリー仕立てでなければ傑作になったかも (´・ω・`)

自画像

自画像

  キンドル版 ⇒ 自画像

男子による女子ランキングなど、ヒエラルキーが形成された中学の教室で、ひとり孤高を保つ少女がいた。
少女は容赦ない方法で、担任教師の行いを告発し、学校から追放する。それは、ある長い闘いの序章だった――。
緻密な心理描写、胸を抉る衝撃の真実、祈りにも似た希望が立ち上るラスト。圧倒的な熱量を孕んだ傑作長編!

Amazon CAPTCHA

おそらくは綿密な取材と、そして著者の筆力により、普通の人間ならあまり垣間見たくない世界を、容赦ないまでのリアルさで描き上げている。

それゆえに読者を選ぶこととなるだろうが、この類の話が嫌いな読者をも一気読みさせてしまう程の迫力をもった作品だ。

特に本作の4分の3以上(312ページのうち240ページ)を占める田畠清子により語られる部分の、リアリティ溢れる心理描写の妙は、本作のイチバンの読みどころだろう。

反面、終盤の60数ページ、蓼沼陽子と松崎琴美の視点でそれぞれ語られる部分は、そのアンバランスな構成も相余って、私にとっては少々不満の残るエンディングだ。

一言で言えば、そこまでの陰湿ながらもリアル感溢れる世界から、一気にリアル感のない、謂わば作り話的なものに変質してしまうのである。

小説なのだから作り話なのは当たり前だが、前半の素晴らしさを台無しにしてしまってる感が、あまりにも勿体ない。

そういった意味で、本作をミステリー仕立てにしてしまったところに、根本的な問題があるのではないだろうか。

清子視点部分の240ページをそのままに、前半のリアル感と緊張感を失わない形で、また別のエンディングを迎えられたら、きっとそれは素晴らしく、かつ迫力のある小説になったに違いない.......惜しい (´・ω・`)


(間違ったことを書いているとは全く思わないが、最近やや本の読み方がひねくれているかな......とは思う。 もう少し素直な読み方を心掛けよう。)