【読書記録】わかれ(瀬戸内寂聴)
エッセイ4編、小説5編の9つの作品からなる短編集。
エッセイは五木寛之の想い出、自分の家族のこと、武田泰淳の書いた秋瑾と自ら書いた管野須賀子をめぐる話、重信房子との面会の話と、いずれも興味深い話だ。
彼女自身のの歴史をある程度知っていると、話は更に興味深くなるだろう。
内容的には「老い」や「死」を見据えた表現が多いが、それを表現する言葉そのものは年齢を感じさせない瑞々しいものだ。
エッセイは書いた人の感受性が顕になるものだが、一般的に考える93歳の書いた文章とは到底思えない。
年齢だけでは感受性は衰えないのか、それとも瀬戸内寂聴が特別なのか。
小説は表題作となった「わかれ」が秀作だ。
91才の女流画家のと、非常にモテる50才のカメラマンの、友情のような恋愛のような、プラトニックだけど官能的な、そんな素敵な関係とその別れを、とても美しく切なく描き上げている。
瀬戸内寂聴の書く日本語は、美しくそして分かりやすく、背筋が伸びた姿勢の良さを感じる。
それが年齢を感じさせない若々しさの、一つの大きな要因だろう。
いつまでも、100歳になっても、変わらぬ良い作品を生み出し続けて欲しいと、切に願う。
★★★★☆