最近読んだ本(「ラブレス」桜木紫乃 他)

 

ラブレス

ラブレス

 

重たく過酷な人生を軽やかに生きたオンナ、百合江の一生を描いた、2011年下期の直木賞候補となった作品。

 

はっきり言ってその2年後に直木賞を受賞した「ホテルローヤル」より、小説としての読み応えは十分。

(この作品が候補になっていなかったら、2013年の受賞もなかっただろう)

 

惜しむらくはラストが、メロドラマ的なハッピーエンドになってしまったところ。

 

百合江の「救い」として、このようなラストが用意されたのだろうが、もう一人の男の方が自然だし相応しいような気がする.......のは、男としての同性に対する身贔屓だろうか。

★★★★☆

 

 

秋葉原先留交番ゆうれい付き

秋葉原先留交番ゆうれい付き

 

オタクの駐在警官「権田」、イケメンだけどぼんくらの後輩警官「向谷」、そして足しか見えない美人?幽霊の「足子さん」の3人?が、秋葉原を舞台に繰り広げる短編連作交番小説。

 

途中までものすごく面白かったのだけど、終盤に向けて作者が書きたかったことをあまりにも多く取り込みすぎて、やや纏まりに欠けてしまったことがやや残念。

ちなみに本作は明らかにシリーズ化を予感させる終わり方となっているので、今後に期待。


以下のインタビューでも続編について「この本が売れれば、ですね。読者のみなさん次第です(笑)」と、意欲満々である。 

 西條氏は「金春屋ゴメス」「善人長屋」「神楽坂日記」などのシリーズ物があるが、何れも今のところ2~3作どまりで、これが西條奈加の代表シリーズ.....ってものがない。

 

本作は魅力的なキャラ設定舞台舞台設定など、素材的には彼女の代表シリーズとなる可能性を大いに秘めた作品なので、続編に大いに期待したい。

 ★★★★☆

 

 

八日目の蝉

八日目の蝉

 

 何年か前に映画化されたのは知っていたが、ストーリーに関する予めの知識は殆どなしに読み始める。(その前にドラマ化されてたのは知らなかった)

 

いきなり「ちょ....おい! 待てよ!」的に物語が始まり、自分的にはあまりページをめくる手が進まないタイプの小説かな.....と不安になるも、そこは流石の角田光代先生。

 

中盤にかけて、読者が紛れもない犯罪者である希和子の逃避行を、内心応援したくなるような展開にしつつも、あっさりと裏切りのジ・エンド。

 

後半は恵理菜目線の、事件を辿りながら彼女の葛藤と希望を描く。
心地よい余韻を残すラストも、なかなか素敵である。

 

まぁ、角田先生、手堅く上手いっすよね♪
 ★★★★☆