【読書記録】虫たちの家(原田ひ香)......核心部分でやや書き込みが弱いところもあるが、新境地を拓く意欲作
- 作者: 原田ひ香
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2016/06/16
- メディア: 単行本
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傷ついて、さらされて、私は名もなき虫となる。ここに生きる覚悟でーー
島にある「虫たちの家」は、ネット社会で傷つけられた女性たちが名を捨てひっそりと共同生活をしている。古参のテントウムシは、美しく奔放なアゲハが村の青年たちに近づく企みを知り不安になる。『母親ウエスタン』で注目の作家が描く書下ろし長編。
虫たちの家 | 原田 ひ香 | 本 | Amazon.co.jp より
上の引用にある「ネット社会で傷つけられた女性たち」は、「ケ●●バーガー事件」とか「三鷹ストーカー事件のリベンジポルノ」とかがモデルになっていて、また典型的なサークルクラッシャーが出てきたりで、作者のネットウォッチャー振りが垣間見えてニヤリとした。
それはともかく、本作はシリアスなミステリー調の作品で、今までの原田ひ香にはあまりなかった作風であり、緊張感を保ちながらグングンと読み進められる、手応えのあるなかなかの秀作である。
物語は主人公の視点の他に、もう一つ主人公の幼少期を思わせる「謎」の視点の二つから進められる。
その「謎」が明かされるくだりがお話のクライマックスなのだが、それを既知のものとして全体を俯瞰し直すと、「謎」であった部分の動機やその人物のキャラ付けがやや弱い。
「その人は病んでしまったのだ。」......残念ながら、それは事実の説明でしかない。
そこにある狂気や心の闇を(手法は様々あれど)描き上げるのが小説の一つの醍醐味である。
本作の核心となる部分であり、もう少し深く描いていれば、氏を代表する傑作になった可能性を感じるだけに残念である。
しかし作者が新境地に果敢に挑戦した姿勢は買うし、その結果としての作品についても、全体としては十分に及第点以上の面白い小説だといえる。
前も書いたが注目している作家の一人なので、次作にも大いに期待している。
【読書記録】早春賦(山口恵以子)......後半の視点チェンジは悪手では?
- 作者: 山口恵以子
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2015/11/26
- メディア: 単行本
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明治維新後、金貸業から事業を拡大させた大堂家の娘・菊乃は、身分違いの伯爵家に嫁ぐ。そこで待ち構えていたのは、歌舞伎より能を、世界情勢より貴顕社会の噂話を好み、欲望と快楽に耽る一家だった。生家との違いに驚き、爛れた伯爵家の闇の深さを知った菊乃は、持ち前の負けん気が顔を出すのを感じていた…。女性の権利が認められなかった激動の明治時代、旧弊な価値観はびこる格式張った家に、菊乃が新時代の風を巻き起こす!
早春賦 | 山口 恵以子 | 本 | Amazon.co.jp より
社員食堂のおばちゃん作家として有名な山口恵以子氏の作品はこれが初めて。
好きなジャンルと少し離れた作品が多かったので、これまで読むきっかけがなかった。
日経新聞の夕刊のエッセイ欄(プロムナード)の火曜日を今年の1月から半年間担当していたものを読み、この作家の書く小説はきっと面白い......と思い手にしたのが本作である。
結論として「一気読み」させるだけの勢いと筆力を感じさせる、かなりの佳作であった。
特に前半における主人公・菊乃の魅力的なキャラ設定と物語展開の痛快さは流石であると感じた。
ただ後半はその痛快さが影を潜め、反対に昼ドラ的なドロドロ・バタバタした展開になるのが少々惜しい。
基本的には菊乃の一代記にもかかわらず、後半は娘の早紀子(正確には亡くなった夫が菊乃の右腕的な使用人に産ませた子......そんな鬼畜的な話が盛りだくさんw)視点の物語になっているのも、小説的勢いが失われてしまった一因なのだろう。
作者のインタビュー記事によれば、むかし漫画家を目指していた頃、娘・早紀子を主人公にした物語を書いていたとのことなので、なにか拘りがあったのかもしれないが、結果的には悪手だったと思う。
とは言え冒頭に書いたとおり、十分に面白い作品ではあったので、今後他の作品も読んでみたいと思う。
【読書記録】ファミリー・レス(奥田亜希子)......ここまでのベスト、次の長編が楽しみ
- 作者: 奥田亜希子
- 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
- 発売日: 2016/05/27
- メディア: 単行本
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姉と絶縁中のOLと、ルームメイトの毒舌女子。怒りん坊の妻と、そんな彼女を愛しているけれど彼女のかぞくに興味を持てない画家の夫。バツイチのアラフォー男性と、妻に引き取られた娘。ほんとうの親子になりたい母親と、姉の忘れ形見の少女。同じ屋根の下で暮らす女ともだちや、ふたつきに一度だけ会う親子。家族というには遠すぎて、他人と呼ぶには近すぎる――単純なことばでは表せない現代的な"かぞく"の姿を、すばる文学賞受賞新鋭が切り取りました。瀧井朝世、豊崎由美、東えりかなど本読みたちが大絶賛! 紡がれるひと言ひと言が心を揺さぶる、感涙必至の短編集。
ファミリー・レス | 奥田 亜希子 | 本 | Amazon.co.jp より
日経の書評欄で北上次郎が高評価つけていたので手にとった一冊。
初めての作家さんだけどなかなかの力作だ.....なんて思いながら巻末の著者略歴を見たら奥田亜希子さん、すばる文学賞を受賞した「左目に映る星」も、次作の「透明人間は204号室の夢を見る」も読んでいた.......申し訳ない m( )m
自分にとってでは、前2作は作者の名前を覚えられない程度の印象だったのだろうが、そんな事実に少し驚きを覚える程、今回の短編集は面白かった。
本作の登場人物は、不幸、もしくは不幸まではいかなくても現状に不満ややるせない思いを抱いている人達だ。
その彼ら彼女らが見出すささやかな希望や救い、そして許しを、ウェットになり過ぎない距離感を保ちながらも、包容力豊かに描き上げる。
心情の機微を切り出すその上手さが、今回短編という形において特に際立ったのだろう。
とは言え前2作に比べて小説家としての力量は、分かりやすいレベルで上がっていることがうかがえるので、次の長編がとても楽しみだ。
【読書記録】ママがやった(井上荒野)......登場人物のクズっぷり堪能する痛快な作品
- 作者: 井上荒野
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/01/16
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ママはいいわよべつに、刑務所に入ったって
小料理屋の女主人百々子七九歳と若い頃から女が切れない奇妙な魅力をもった七つ年下の夫。半世紀連れ添った男を何故妻は殺したのか。
人間だれしも潜在的に「クズ」であり、また「クズ」なりきりたい願望をもっている。
しかしながら、社会生活を差障りなく送るために仕方なく、分別を持ったマトモな人間のフリをして暮らしているのだ。
......と書くと、一部界隈から「主語が大きい」と叱られるので、一旦は主語は「私は」に訂正しておく。
この8編からなる連作短編集の登場人物の殆どが「人間のクズ」であり、本作を一言で表すとしたら、その見事なまでのクズっぷりを堪能する作品である。
亭主を殺した母親がその亭主と所帯をもった経緯、定職もなく浮気を繰り返す亭主のいい加減さ、5回だったか6回だったか覚えていない長女(何が「五、六回」なのかは読んでのお楽しみ......わたしはこの題名に仰け反ったw)を始め、クズな人物のクズなエピソードのオンパレード。
最後はそのクズな家族が集まっての最高にクズな結末。
これを痛快と呼ばずになんと呼ぶのだろうか。まさに井上荒野の真骨頂である。
ところで、最近巷にあふれる「登場人物に共感できませんでした」といってその作品を「つまらない」と決めつける、所謂「共感厨」(←思い付きの造語w)は、読書の楽しみの半分を放棄しているのではないかと、かねがね思っていた。
しかしながら人生経験が豊富ではなく、挫折を知らず、未来が夢と希望に溢れている若者にっとっては、それも仕方ないのかと、最近は思うようになってきた。
全ての若者がそうではないにせよ、この作品も(予想どおり)そういう感想が多かったので、ふと思ってみた次第である。
いや待てよ......この作品を文句なしに面白いと感じている私は、実はクズに共感しているのかもしれない。
......と考え、本記事冒頭のテクストに戻る。
やはり読書は面白い。
【読書記録】ニセモノの妻(三崎亜記)......三崎亜記が熱い悲しみを描いた名作
- 作者: 三崎亜記
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2016/04/22
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妻――それはいちばん近くて、いちばん不可解なアナザーワールド。「もしかして、私、ニセモノなんじゃない?」。ある日、六年間連れ添った妻はこう告白し、ホンモノ捜しの奇妙な日々が始まる……。真贋に揺れる夫婦の不確かな愛情を描く表題作ほか、無人の巨大マンションで、坂ブームに揺れる町で、非日常に巻き込まれた四組の夫婦物語。奇想の町を描く実力派作家が到達した、愛おしき新境地。
三崎亜記の新作は、夫婦をテーマにした4作からなる短編集。
もちろん三崎亜記なので、普通の世界の夫婦を描く訳もなく、4編とも不条理な世界で真面目に暮らす人々(本作の場合夫婦)を大真面目に描く、いつもの三崎ワールド。
ただ今回は4篇それぞれに違う趣があり、また表題作以外にも力作が多いので、それぞれについて簡単に触れさせていただくこととする。
一作目の「終の筈の住処」については......う~ん、ごめんなさい。 分譲マンションの管理に関する作者の理解に明らかな誤認.....というか知識不足(具体的には管理組合と自治会の違い、決議の手続きなど、要は区分所有法等について)があって、それが気になって物語に集中できなかった。
多くの人にとってはどうでも良いことなのだろうが、人それぞれなんかの弾みで看過できなくなるものがあるのは仕方のない。
ただ他作品に比べ不条理度合いは軽い分、日常世界の中でいつでも起こりうるかもしれない.....という部分で、不穏な後味の残る良作だ。
二作目は表題作の「ニセモノの妻」。
本作は三崎作品にしては珍しく「奇妙な味」系のややブラックな味わいの作品。
こういう味わいの短編で一冊まとめると、また面白い作品ができるかもしれない......と思わせる、氏の新境地。
三作目「坂」は、三崎亜記の一丁目一番地的な不条理世界を大真面目に書いた作品。
この設定のまま長編に展開しても面白そうだが、読者にそう思わせてしまうのは、短編としてはやや煮詰め方が足りないのかもしれないが、ラストはなかな素敵である。
そして最後の「断層」.....これは不条理というよりSF的な設定の中で、バカップル的夫婦を描くのだが、三崎作品でこれほど泣かされたことはない。
本作について何かを書けば、それはネタバレになってしまうので何も書かないが、クール な味わいの多い三崎作品のなかで、これほど熱い悲しみを描いたものは珍しい。
ちなみにこのバカップル夫婦、モデルは三崎氏のご家庭だそうである。
余談ですが、「断層」に出てくる夫婦は、そのまま私と妻をトレースしたところがあります。今はもう消してしまっているのですが、以前、私がやっているとは明かさずに、自分の夫婦生活についてのブログを書いていたことがあったんです。そこに書いた文章をどこかに残しておかないともったいないなと思って、「断層」の中で使っています。だから、夫婦の会話の場面などは、まるっきり私の日常会話だったりします。
ま、勝手にしてくれという感じであるが、紛れも無い名作なので、ぜひご一読をお勧めしたい。
【読書記録】小松とうさちゃん(絲山秋子)......肩の力の抜けた新境地を拓く佳作
- 作者: 絲山秋子
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2016/01/19
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--「小松さん、なんかいいことあった?」
52歳の非常勤講師小松の恋と、
彼を見守るネトゲに夢中の年下敏腕サラリーマン宇佐美の憂鬱52歳の非常勤講師小松は、新潟に向かう新幹線で知り合った同い年の女性みどりが気になっているが、恋愛と無縁に生きてきた彼は、この先どう詰めればいいか分からない。一方、みどりは自身の仕事を小松に打ち明けるかべきか悩んでいた。彼女は入院患者に有料で訪問サービスをする「見舞い屋」だったのだ。小松は年下の呑み友だち宇佐美に見守られ、緩やかに彼女との距離を縮めていくのだか、そこに「見舞い屋」を仕切るいかがわしい男・八重樫が現れて……絲山秋子が贈る、小さな奇蹟の物語。
小松とうさちゃん | 絲山秋子 | 本 | Amazon.co.jp
絲山秋子にしては珍しく洒脱な味わいの、軽妙な作品。
導入部から物語の視点(語り手)がこまめに変わり、最初(登場人物が確定するまでの間)少し戸惑うのだが、それさえも小気味よいリズムに感じられ、期待感をもってページを捲る手がとまらなくなってくる。
この小説のいちばんの魅力は、主要登場人物である小松、みどり、宇佐美の3人のキャラがそれぞれに素敵であるところだと思うのだが、その中でも特に宇佐美の存在がこの物語の彩を豊かなものにしている。
宇佐美は40代にしてネトゲにはまり、また家庭はバラバラでかつ適当に外で遊んでいる、かなりいい加減な感じの男であるが、実は仕事はかなりデキル風である。
本社から出張で大阪支店で会議に出席して業績不振の営業所を叱責するくらいだから、支店長と同格か格上の営業本部長くらいのポジションなののだろう。
またネトゲで配下に冷静かつ的確な指示を下しているのをみても、デキル感は滲み出ている。
そんな彼が、ぶつぶつ言いながらも友達の小松のために相談に乗り、また最後みどりの窮地を救う。
またエンディングのオチも彼らしくて微笑ましい。
そんな愛すべき「有能ないい人」.......絲山作品では今まであまりいなかったキャラだと思うが、彼のおかげでシリーズ化をファンとして強く望むくらいに素敵な小説になったのは間違いない。
「離陸」とはまた違った意味で新境地を拓く作品といえるだろうが、わたしはこっちの方が好きである。
ただ一点だけ気になったことがある
物語の後半、みどりが宇佐美の LINE をみつけて情報提供したことが明かされるのだが、小松から得た「いつも話してる宇佐見君って友達」って言う情報でだけで、宇佐美の LINE にたどり着けることができるのだろうか?
LINE には友達の友達をサジェストする機能はないので LINE 単独ではおそらく不可能。
可能性として有り得るのは、3人とも Facebook をやっていて、小松とみどりが友達で、みどりのアカウントに共通の友達1名として宇佐美のアカウントがサジェストされて、プロフィール欄見たら LINE_ID が掲載されていた......ってところだろうか?
下らない突っ込みで恐縮だがちょっと気になったので.......
言いたかったことが途中に埋もれてしまったので、もう一度まとめる。
キャラ設定が素晴らしかったので、肩の力を抜いて書いたら、そのキャラ達が自由に動き出し、結果として新境地を拓いてしまった......と言ったら作者に失礼だろうか。
わたしはこの作品、大好きである。
【読書記録】軽薄(金原ひとみ)
- 作者: 金原ひとみ
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2016/02/26
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十代の終わりに、ストーカーと化した元恋人に刺された過去を持つカナ。29歳のいま、裕福な年上の夫と幼い息子、仕事での充足も手にし、満たされた日々を送っていた。そこに、アメリカから姉一家が帰国。未成年の甥から、烈しい思いを寄せられる。危うさを秘めた甥との破滅的な関係は、彼らと、彼らを取り巻く人々をどこに運ぶのか。―空虚への抗いと、その果てにある一筋の希望を描く渾身の長篇小説。
軽薄 | 金原 ひとみ | 本 | Amazon.co.jp
平成12年『マザーズ』以来の、金原ひとみ久々の長編。
この『マザーズ』は紛れもない傑作だと思った( このエントリの最後に当時書いたレビューを引用しておく)のだが、その後上梓された短編集2編が色々と微妙だったので、本作は個人的にはとても注目していた。
実際本作は期待に違わず、主人公カナのある意味ドライな世界観を通して描かれる、リアルかつ緊迫感溢れる筆致は、流石だと認めざるを得ない。
だがしかし終盤、物語が動き始めると、その筆致に乱れが感じられてしまったのは残念だ。
特に最後の主人公の選択......ジャンル的には純文学なので、これはこれで十分に「あり」なのだが、前半のクールかつドライな世界観からするとやや唐突感は否めない。
特にその決断の大きな判断要素の一つが、夫の不貞(疑い)というもの、純文的にはなんか『コレジャナイ』感が拭えないのである。
それなしに主人公の最後の選択に納得感(共感である必要はない)を読者に与えることが出来たなら、何倍も豊かな純文小説になっていたと思う。
そうすると、もしかしたら題名も『軽薄』ではなく、別のものになっていたかもしれない......と考えると、作者がこの作品で表現したかったものは、いったい何だったのか?......という、残念な結論になってしまった。
次作に期待する。
当時は、人によってはグロテスクに感じるかもしれない世界を、あまり上手くない文章で書いてる割には、チョッと光るものはあるかな.....でも長続きはしないだろうなぁ....ぐらいの感想だった。
.....で、今回ははっきり言って「傑作」である。
「人によってはグロテスクに感じて嫌悪感を持つだろうなぁ…」ってのはあい変わらずだし、「あんまり上手くない文章」ってのは、私はだいぶ上手くなったと思うが、そう思わない人も多いようだ。
しかしこの小説には明らかに人を引きずり込む迫力があり、そしてそれは小説家として成長した彼女の力量なのだろう。
出産、育児がテーマの割りに、主要登場人物がヤク中の小説家とか、不倫の子を身籠るモデルとか、幼児虐待の専業主婦とかのやや極端な人々であったり、その彼女達がこれでもかと思うくらい救いようのない状況に陥ったりで、万人が楽しめる内容ではない。
重ねて、そもそもボリュームがある上に、比較的改行のが少ない文体が、軟弱な読者を遠ざけているのは否めない。
それでもやはりこれは紛れもない「傑作」であり、8年前のデビュー時に比べ格段に成長した若手作家を、素直に称えたいと思う。
まぁ子育てなんか殆ど終わってしまった50過ぎのオッサンが読んでも、今更なんの役にも立たないのだが、20年近い昔の嫁さんに「無神経でした、ごめんなさい」と言っておこう....心の中で。