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【読書記録】報われない人間は永遠に報われない(李龍徳).......思い切りネガティブだが美しい純愛小説

報われない人間は永遠に報われない

報われない人間は永遠に報われない

  Kindle版 ⇒ 報われない人間は永遠に報われない

深夜のコールセンターで働く「僕」は、3000円で賭けに乗り、さえない上司・映子との模擬恋愛を始める。自尊心ばかり肥大した男と、自己卑下にとり憑かれた女。孤独だった二人の魂がようやくひとつになったとき、男は滅びはじめる…

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2014年の文藝賞受賞後第一作。

デビュー作でかつ文藝賞受賞作の「死にたくなったら電話して」は、私が2015年に読んだ小説のベストワンに挙げており、今回の新作はとても期待していた一冊だ。
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上記エントリでも書いたとおり、前作は狂気と悪意を独特の耽美的世界観で描いた秀作であった。

そして本作もまた『男を破滅に導く「運命の女」を描く、著者待望の第二作!』的な売り方をしていることもあり、実際読むまでは、前作と同じ世界観の作品かと思っていた。

しかしながら、実際読んでみると「運命の出会い」なんかないし、女がオトコを「破滅に導」いている訳でもない。(こういうオビや広告のウリ文句と本の内容が違う、サギ的な営業はホントやめてほしい!)

本作を一言で表すと、正当かつ普通の恋愛小説である。

ただ、出逢いから別れまで、人間の弱さと醜さを中心に恋愛のネガティブな面を、そこまでやるかという程にデフォルメして描きすすめられる。

結末もどうしようもない最低の別れ方で終わるのだが、それでいて思いもかけずに静かな涙を誘うあたりは、小説としての迫力と氏の才能を感じさせる。

ただ、エピローグ的な「後日談」で、必要以上にダークサイドに寄せたのは、氏の作風とはいえ、やや興ざめだ。

前作が「出会いから破滅まで」であったのに対し、本作では中途半端な破滅など描かずに、「出会いから別れまで」で終わらせ後は余韻を残すエンディングの方が、小説としての味わいは深まるのではないだろうか。

とはいえ、読者を選ぶところはあるにせよ、純愛小説として間違いのない秀作であり、次作にもまた大いに期待をさせられる。