【読書記録】屋上のウインドノーツ(額賀澪)......絶賛売出し中の若手新人の佳作

屋上のウインドノーツ

屋上のウインドノーツ

 

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ストレートど真ん中の青春小説。

感情や言葉を上手に切り抜いて、それをわかり易く、面白く、時に感動的に配して表現する技は、若さを感じさせない手練れ感と安定感があって、生きのいい新人が出てきたな......というのが第一印象。

1990年生れの額賀澪は、2015年の第22回松本清張賞を本作で受賞し、同年に第16回小学館文庫小説賞を受賞した「ヒトリコ」を本作と同日発売している。

本書の文藝春秋小学館がタッグを組んで話題づくりをして、若手新人を大いに売り込もうという分かりやすい「あざとさ」がほとばしっていて(笑)、その後も両社から1冊づつ単行本を出している。

ま、本人にとっては大きなチャンスだと思うので、ガンガン書いていい作家に育って欲しい。

本作については、少し厳しいことを言えば、終盤やや物語に勢いがなくなってくのが惜しい。

志音と大志の二人の主人公は最後まで同じ疾走感で走り切らせた方が、この物語は生きたのではないだろうか?

これは構成力の問題で、冒頭に評価した表現力に比し、構成力はまだ伸び代があると言わざるを得ない。

あと主人公たちに恋愛を絡ませるか
否か......これは恐らく作者は確信してこのような選択をしたのだろうが、わたし的にはそうでない選択の方が良かったような気がする。

何れにしても(繰り返しになるが)ガンガン書くことによって、まだまだ伸びる作家だと思うので、是非とも頑張って欲しいと思う。