【読書記録】大川契り(西條奈加)......時代ドラマの復権を願う

大川契り: 善人長屋

大川契り: 善人長屋

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西條奈加の「善人長屋シリーズ」第三弾。

氏のシリーズ物は他に、SFファンタジー系時代小説の「金春屋シリーズ」、現代市井軽ミステリー小説(勝手に造語w)の「神楽坂日記シリーズ」があるが、いずれもまだ2作づつなので、本格的?人情時代小説の本作が今のところ代表シリーズとなるのだろう。

氏の小説はメインとなる時代小説でも、他のファンタジー系や現代ものでも、キホン市井が舞台の人情ものであり、この分野の若手?では今、質・量ともに第一人者だろう。

本シリーズは、善人長屋と巷でよばれながら、実は一人を除いた住人全員が裏稼業を持つという長屋を舞台とした連作短編で、今回も安定した西條ワールドで、何とも言えない良い味を出している。

特にラスト2編の描き下ろしが、やや重めのトーンながら秀逸だ。

若いころは歴史小説は読んでも時代小説なんて見向きもしなかったのだが、最近は時代小説(特に市井もの)が面白く、西條奈加のほか、葉室麟朝井まかてなどがお気に入りだ。(この両氏は歴史小説に近いものも書くが、それらも面白い)

50も半ばともなると、やはりこういう日本人的人情ばなしに共感を覚えるようになるのだろうか。


はなしは変わるが、TVで時代劇の連続ドラマは消滅したとの記事をどこかでみた。

ここ10年くらいドラマ・バラエティの類は一切観なくなった(アニメはたまに観るw)ので、事実かどうかはわからないし、調べてもいないのだが、それに近い状況であることは想像に難くない。

一方CS放送では、時代劇チャンネルが高齢者を中心にとても人気が高いという話も聞くのだが、これは旧作の再放送がメインなので、結局は新しい番組は作られていないという現状には変わらないだろう。

韓流ドラマでは、嫁が夢中になって観ているのを傍でみていると、時代ものもかなり人気があるようである。

大河ドラマに限っては幕末ものや戦国ものは人気があるようなので、江戸時代を舞台とした時代ものにも、ひとつの文化としてぜひ復権して欲しいと、中年日本人として切に願う。

そういった意味では西條奈加の時代ものは、ストーリー的にも若い人にもウケそうだし、人気のの女優さんとかイケメン俳優を配して連続ドラマ化したら、良い作品になるのではないだろうか。

できれば実現してほしいものである。