【読書記録】薄情(絲山秋子)

薄情

薄情

絲山秋子の新作。

前作の「離陸」はエンタテイメントに寄った氏の新境地を拓く意欲作だったが、本作は絲山ワールドど真ん中の作風。

舞台は、氏が居を構え、また氏の傑作(だと勝手に思っている)「ばかもの」と同じ群馬県高崎市

この東京から近い地方都市に「帰ってきたもの」「住み続けているもの」そして「東京からやって来たもの」の、それぞれ織りなすドラマが淡々と綴られる。

途中、主人公の身も蓋もない失恋が描かれるところが「ばかもの」と似ていて興味深かったが、かの作が終盤に向け感動的なフィナーレを迎えるのに比べ、本作ではさらに後味の悪い事件が起こる。

その事件が「住み続けるもの」と「余所者」の違いを浮き彫りにして、比較的静かに物語は終わる。

地味な作品だが、絲山秋子らしい良い小説だと思う。


それはそうと、この本の題名、何が「薄情」なのだろう?

特定の登場人物なのか、はたまた別の何かが薄情なのか......いろいろ考えたけど、良くわからない。

きっと作者なりの意図はあるのだろうが(当たり前だw)、私の読解力ではそれを汲み取ったり想像を巡らす事ができず、少々悔しい思いをした。