【読書記録】薄情(絲山秋子)
- 作者: 絲山秋子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/12/18
- メディア: 単行本
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絲山秋子の新作。
前作の「離陸」はエンタテイメントに寄った氏の新境地を拓く意欲作だったが、本作は絲山ワールドど真ん中の作風。
舞台は、氏が居を構え、また氏の傑作(だと勝手に思っている)「ばかもの」と同じ群馬県高崎市。
この東京から近い地方都市に「帰ってきたもの」「住み続けているもの」そして「東京からやって来たもの」の、それぞれ織りなすドラマが淡々と綴られる。
途中、主人公の身も蓋もない失恋が描かれるところが「ばかもの」と似ていて興味深かったが、かの作が終盤に向け感動的なフィナーレを迎えるのに比べ、本作ではさらに後味の悪い事件が起こる。
その事件が「住み続けるもの」と「余所者」の違いを浮き彫りにして、比較的静かに物語は終わる。
地味な作品だが、絲山秋子らしい良い小説だと思う。
それはそうと、この本の題名、何が「薄情」なのだろう?
特定の登場人物なのか、はたまた別の何かが薄情なのか......いろいろ考えたけど、良くわからない。
きっと作者なりの意図はあるのだろうが(当たり前だw)、私の読解力ではそれを汲み取ったり想像を巡らす事ができず、少々悔しい思いをした。